マレーシア・シンガポールへの修学旅行は平成18年度より実施しています。マレーシアは英語圏の国の中では日本に最も近く、複合多民族国家で、宗教も生活習慣も異なる民族同士が、お互いを尊重しながら平和に暮らしている国です。隣人や異なった価値観の人を思いやる精神を持った優しい民族性に触れ、相互理解・多文化共生の概念を体感することができます。ホームステイも経験することで、国際社会の一員としてのコミュニケーション能力が高まります。

また、熱帯雨林での植樹体験や、現地の大学での環境問題に関する講演などを通して、地球環境に対する意識を高めることも修学旅行の目的としています。

 

 

平成24年度 マレーシア・シンガポール修学旅行の記録

期  日 平成24年12月6日(木)~12月11日(火)
旅 行 先 マレーシア・シンガポール
実施学年 高校2年生(マレーシア・シンガポールコース選択者)
参加人数 118名(男子67名,女子51名)

 

12月6日(木)1日目

 6時15分学校集合、貸し切りバスで福岡空港へ出発。福岡空港から6時間35分のフライトを経て17時にシンガポール航空にて乗り継ぎ、21時にクアラルンプールに到着した。

 

第2日 12月7日(金)

 8時にホテルを出発しNILAI大学へ。「環境問題について」の講演を聞き、7度上昇すると地球上の生物が生存できなくなること、誰が法律作成の権限を持ち、経済を動かせるかが大きく影響するということなどを学んだ。質疑応答の後、「熱帯雨林がもしも無くなったとしたら,どのような変化がもたらされるか」を8班に分かれて話し合い,プレゼンテーションを行った。「現在地球は~」「私たち人間にできることは~」「そのために私は~したい」と、気球規模の問題解決への意思表示が、自己の行動に関わる決意表明として変化していく成長が目の当たりにできた。

 

第3日 12月8日(土)

  朝9時、前日の熱帯雨林での学習を胸に、サイバージャヤ市にて記念植樹を行った。目にする植物も、熱帯らしいたくましさと、強い色合いのものが多く、特にゴムの木には「これ本物ですか?」「すごい!ゴムが出ます!」と反応が大きかった。

 また、扇形の「旅人の木」を「孔雀みたいだね」と話していたところ、現地の方が「あの平たい扇の形の角度が、方位を示してくれるので、迷った旅人が目印にしたのです。そして、中に水分を貯めこんでいるため、給水の助けにもなった、だから旅人の木なのです。」と説明してくださり、生徒ともども「なるほど」と納得した。

由来や伝説は、いつでも人をひきつける力を持っている。

プトラジャヤ見学(プトラ会場・ピンクモスク・首相官邸)の後、ホームステイ先「バンフリス村」に到着。アグロツアー(農業見学)でゴム園,油ヤシ園を見学し、ウェルカムセレモニー後,各ホームステイ先へ移動した。

 昼食はホームステイ先でいただいた。特にカレーが絶品だと生徒たちも喜んでいた。食事場所にタライが置いてあり、食後の皿や食べ残しの鶏の骨を全て入れていく。猫たちが、その皿に付いたカレーや鶏肉の余りを食べ、ゴミや洗い物が減って一石二鳥とのことだった。

ホームステイ先を巡ると、生徒たちはすっかり現地に興味津々で馴染んでおり、「ハンモックだ!」「野生のサルがいました!」「先生巨大トカゲ見ました?」と、教員にも沢山話しかけてきた。また、ホストファミリー巡りの車の運転手さんの携帯電話が鳴ったとき、着信メロディがドラえもん(「あんなこといいな、できたらいいな」のフレーズ)だったことにも驚いた。庭に生えたランブータンをその場で刈り取って下さり,初めて「さっきまで生えていた」熱帯の果物を口にすることができた。

「入浴したい」「朝は何時に出発したい」などの意思表示をきちんとし、コミュニケーションをとること、と事前に指導しておいたが、生徒たちはホストファミリーとバドミントンをしたり、身振り手振りで教えてもらいながら葉っぱを編んだり、チョンカ(ビー玉を使った数のゲーム)をしたり、ヤギ小屋を見に行ったりと、とても活発に、自己紹介しながら自然に交流していった。「こういうときには、何と言えばいいのか」と一生懸命考えながら英語を話しており、頭と体を使って、心を通じあわせようとしている姿勢が目に見えた。

また、「のどぼとけ」という響きがマレーシアの人にはなぜかとても面白いものだったらしく、「のどぼとけ!」と言い合っては一緒に大笑いしている姿がまぶしかった。おとなしい女の子とは、スケッチブックで絵を描きながら徐々に交流していた。心身ともに健康な生徒たちだと誇らしく感じた。ホストファミリーの要望で、「津軽海峡冬景色」を熱唱した生徒もいたそうである。

 

第4日 12月9日(日)

8時にバンフリス村を出発し、11時「世界遺産マラッカ」到着。チャイナタウン,オランダ広場,セントポール教会,サンチャゴ砦を見学しながら、現地のガイドさんに多くの話を伺った。気温33度の中でも、生徒たちは汗を流しながら積極的に見学し、歩き回り、カメラにおさめていた。

 また、刺激を受けた後に、バスという箱の中で一緒に移動し、会話ができるということも、生徒たちの親しさを増したように思う。外を見れば、その地で違う空間を暮らしてきた人々や、明らかに日本とは違う形をした建物や植物がある。移動してきて眺める建物の中に、同じ時間のはずでも異なる環境で暮らしてきた、暮らし続ける人がいるということ、そして彼らから見れば、私たちのバスも、彼らの日常の中にある「外国人ツアーのガイド付きバス」であるということなども話していた。余白の時間を共有することも、繋がりを生むということに気付かされる。

 

第5日 12月10日(月)

 8時に出発、マレーシア出国手続き、シンガポール入国手続きを行った。10時30分、日本人墓地を参拝・献花し「ふるさと」を歌った。マレーシアの泥の河に親しみ、熱帯の植物を見慣れた頃、改めて「ふるさと」の歌詞に触れ、声に出すことで、「日本に帰りたかった」であろう唐行きさんの気持ちが胸に迫る。

「小鮒釣りし かの川」「山は青き 故郷 水は清き 故郷」

 幼い頃に聞いた言葉や、感じた季節の匂い、思い出は、それぞれの人の中に、知らず知らず影響を残すのだろう。それが「懐かしさ」や「ふるさとを思う気持ち」に繋がるのかもしれない。

 シンガポールでは、集合場所の「DFSギャラリア」を確認後、解散場所の「マーライオン公園」で記念写真撮影。班別自主研修を11時30分に開始した。試行錯誤しながら自力で行動する経験がかなり新鮮だったようだ。また、マリーナベイサンズなど、象徴的な建築のデザインは非常に斬新であり、「かたちの持つ力」を感じさせた。

「こんなものを作ってしまうなんて、人間て、すごいですね」と生徒が思わずもらした言葉に大きく頷く。熱帯の自然の中で過ごした後、圧倒的な人工の建築物に触れたことが、生徒たちにとっても、また新しい角度からの刺激となったようだ。

18時に「DFSギャラリア(DFS Galleria Scottswalk)」に集合し、夕食後に屋台街見学、クリスマスイルミネーションを車窓で見学しながら空港へ向かった。経験したことのない雰囲気、取り囲む高層ビル、独特の賑わいや匂いに、生徒たちは大喜びであった。

 22時、航空会社カウンターにてチェックインした。

 

第6日 12月11日(火)

 1時5分、シンガポール航空656便にて福岡へ。フライト所要時間5時間50分であった。朝8時10分到着後入国手続き、バスに乗車し、11時45分に学校へ到着した。「ああ、久しぶりに家のごはんが食べたい」と呟く声も聞こえた。海外に訪れて初めて「これまで外側だと思っていた」人々と繋がることができ、それと同時に「離れてみて気付く、これまで内側に包んでいてくれた日常のあたたかさ」にも気付くのだろう。

 学校までのバスの窓から見える日本の景色が、6日前とは違って見え、日本語の文字が形に見えて不思議な感覚がした。当たり前のことだが、山の形も、「マレーシアと違う」と感じた。それまで知らず知らず張られていた、「日本という枠組の膜」が一定期間取り払われたことで、かえって改めて「見えた」ともいえる。

 様々な日常、風習、言語、宗教、地理的条件、互いに「言語という記号で伝わること」と「簡単には伝わらないこと」がある。共存していくには、それぞれが生きていなければならない。違いを知っておくこと、謙虚に学び続けること、そして直接その場所に行って体験してみることが、様々なものの見方・枠組があることに気付き、共生する世界を育む姿勢に繋がる。

「この旅行を全員で喜びたい。協力する姿勢がとても素晴らしかった。大学での発表、ホームステイでは、言葉や体験による共通理解の大切さを学ぶことができた。飛行機に6時間乗るという経験が初めての人もいたであろう。今回の経験、感じたことを自分の中に種子として植えつけてほしい。そして、それを大切に育ててください。」

 解団式での,野上理事長の言葉である。

 エネルギーに満ちた高校2年生という時期に,熱帯で樹を植え,心の中には種子を植え付けて帰国した生徒たちが,これから咲かせる花を楽しみにしたい。